まるごと宮崎エクスプレス

お漬物大根生産量ダントツ宮崎県。「本干し漬物」特集

大根(だいこん)

古代エジプトの時代から栽培されていたといわれています。根の部分は95パーセントが水分で、ビタミンCと消化酵素のジアスターゼが豊富に含まれています。また葉はカロテン、ビタミンC、カルシウム、食物繊維が豊富な緑黄色野菜です。

寒風本干しまんまの大根

■うまみぎっしり宮崎の干し大根■

宮崎県は干し大根の一大産地として全国的にも有名です。お漬物などの加工用大根の生産量においてはダントツ一位でして、この大根をしっかり天日で干したものがおいしい沢庵になっております。しかし一口に干し大根といいましても、これがなかなか大変な手間と時間をかけた産物であります。

宮崎県では田野町が一番干し大根の生産が多い町で、およそ200戸あまりが大根生産に従事しています。大根のほかにはさといももよく栽培されています。周囲7割が森林で囲まれ、冬は気温が下がります。霧島おろしと呼ばれる乾いた西風が吹いてきます。干し大根用に適した種類は通常の青果でみるものよりは、胴が細くスマートです。この土地で大根づくりが盛んである理由にはこの地の「土」にも大きな関係があります。大根つくりに適しており育ちやすい火山灰分が多い「黒ボク土」で、保水力があるのです。しっとりしていて短期間にすくすくと育ち、皮のうすい弾力性のある大根に成長するのを助けます。

毎年11月になると大根を干すやぐらが建ち始めます。杉の木を柱に竹ざおで桟を組み、タカサが約6m全長100mを越す大きなものが畑のあちこちにできあがります。やぐらには葉をつき合わせて縛られた大根が約2万本一度にかけるんです。やぐらは高く組み、大きい大根はなるだけ風が当るよう高いところにかけます。大根は葉がついたまま干します。葉がついていると水分の蒸散が早くなるからです。

大根は10日ほど乾かすと半分くらいの水分が蒸発し「五分乾」と呼ばれます。さらに5日程干すと70%が抜けて「7分乾」になります。通常の干し大根はこの辺で漬物になってゆきますが、「全乾」といってさらに数日かけてしっかりと干したものもあります。やはり、干せば干すほどに甘みやうま味が凝縮されておいしくなります。びっしりとしわが入るまで干した大根をつかって沢庵にすると歯ごたえがしっかりとして大根そのものの味が感じられます。

干している内側の水分が抜けると同時に中の成分に変化が生じます。酵素の働きで辛味成分が分解され、一方タンパク質やでんぷんがうま味成分や甘み成分へと変わります。

一番大変なのは、大根を干している間の2週間は、厳しい天候の変化とのたたかいです。雨や雪、寒さが遠慮なく襲ってきます。生産者は何をしていてもやぐらに即かけつけ、対策します。

雨は大敵。ぬれると表面に黒ずみがでる「雨ずれ」が出ます。味は変わりませんが見た目が黒くなるので2級品として扱われてしまいます。わずかな雨の合間でもこまめにシートの開閉を行い、貴重な冬の日差しを少しでも大根に当てて乾燥を速める作業は手作業でないとできない話です。12月の寒いなか、農家はいつも夜明け前にはやぐらに向かいます。
少しでも早く長く大根を日に当てるためです。

このほか大根を干している間、特に気をつけなければならないのが寒さです。大根の細胞は凍ると細胞壁が壊れてしまい、歯ごたえがなくなり出荷できないものになってしまいます。気温が0度を下回るときは、昼夜を問わずやぐらに向かいシートをかけ出入り口もしっかりふさぎます。やぐらの中ではボイラーを炊き、送風機でやぐらの中の温度がまんべんなく上がるように温風を回し、凍結しないように気を配ります。ときには正月の初日の出をやぐらで迎えるときもあるとのことです。干している期間はひとときも気が抜けません。

こうしてしっかりと干し上がった大根にはうま味と甘みが凝縮され、きれいなたてじわが入った歯ごたえのあるものになります。

宮崎県でも砂糖や塩で生の大根を漬けるあっさりしたものが好まれる傾向があります。実際干し大根をつかったたくあんの生産は以前の半分以下になっているのが現実です。くさみがなく、あまりしわしわでないものがよいというのは、どちらかというとこのような手間ひまをかけない即席の生産を求めているのです。よく考えるともったいない話です。自然の力を活用した天日干しは地球環境にとって本来のやさしい作業です。太陽の偉大な力で本来のうまみを引き出す。ある意味こんな手間ひまをかけるこちらのほうが贅沢な話ですから、せっかくならば太陽をいっぱいに浴びた本干しをオススメしたいと思っています。

12月の寒い時期が毎年漬け込みの開始です。漬物用のタンクには、大根をすきまなく素早くならべてゆきます。そこに塩やとうがらしをまぜたヌカをかけてゆき、最後に2トンもの重しを載せて3年のときを待ちます。

もちろん好みがありますので、誰でもがおいしいと感じるわけではないかもしれません。しかし、そんななかでも一度原点に戻って食を考えたいとか、懐かしい時代を思い出すことができるもしれない、ひょっとするとそこで今まで知らなかった新しい感覚に出会えるかもしれません。これが自然の乳酸発酵がすすんだ本来の漬物なんだと自信をもっております。

 




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